2000調査実習5月18日

調査実習2000第5回

~文献研究~

Time Table

時間 内容
13:10 「日本人の生き方 ~現代における成熟のドラマ~(D,W,ブラース著 井上 俊・杉野目康子訳 , 1985)

脱工業化諸国において、ライフコースの社会的枠組が変化してきている。人間的成熟に関する
生活史上の時代区分を新しい角度から見直す必要から,著者は本書を執筆した。
日本人のライフヒストリーを著述するにあたって,著者は
①分析の素材として利用できるデータを作り出すこと
②普通の日本人の人生を時間の流れの中で描き出す一種の肖像画を読者に提供すること
を目標とした。それによって、西洋とは違う独特の形で脱工業化段階に到達した日本に対する
紋切り型のイメージを修正すること,普通の成人の間で成熟のレトリックがどのように働いているかを
明らかにすることを目指した。
本書における4つのライフヒストリー(いずれも阪神地区に住む35―55歳の健康で活動中の
男女に対して行なったインタビュー調査によるもの)は
1現代日本小説の検討(主人公の人生・本書のテーマに与える示唆)
2小説と成熟のレトリックの各次元との関連
3対象者のライフヒストリー
4小説・ライフヒストリーに対する作者のコメント
という章立てで構成されている。

13:45 「同時代人の生活史」(庶民生活史研究会編,1989)

個々の農民ではなく、漁民でもなく、広く職人や労働者、自営業者等をも一つに束ねた
社会的カテゴリーを「庶民」とするなら、その人々の、戦時と戦後改革から高度経済成長を経る時期の
生活に関心を寄せ、そうした同時代人の生活史を9篇並べて収録したのが本書である。
同時代人の人びとがこの10人余で代表されるわけではないが、同時代人の社会と文化の規定の
もとにおかれた人びとの、境遇と体験の多様性と変化の豊かさを、この一群の生活史は示している。
(まえがきより)
○ この本の構成
まえがき
1 開拓農民の生活史
2 離島出身者の生活史
3 海女─一漁村女性の生活史─
4 主婦の生活史
5 野鍛冶の生活史
6 鉱山労働者の生活史
7 失対日雇い労働者の生活史
8 木賃住宅の町に住みあう人々の生活史
9 地方政治家の生活史
あとがき
・一つの章で1~2人の生活史が収録されている。(5と8を除く。5は愛知県内の幾人かの
野鍛冶の紹介。8は大阪萱島に住む人々の話をおりまぜて、地域・町づくりの歴史とそこの
人間模様を描いている。)
・ 一つの章の中もまた、1~7つの小見出しに分かれ、必ず最初に「はじめに」がある。
「はじめに」では、どういう意図で話を聞いたか(どこを主に聞きたいか)や、その人の説明・解説・
生涯、その人がその人生を送ることになった風土的説明・社会的背景・生活環境の概況が
まず最初に説明されている。
・ 中身は、最初に史実を述べ(「〇〇さんはこのとき~する」)、その後、本人の語りをつける、
というように進められている。
・ どの章も、最後に話を聞いた人によるフィールド・ノートがついている。話を聞くようになった
きっかけ、興味を持った理由や、話を聞く中で苦労・心配した事や、話者の話してくれた時の様子が
書かれている。フィールド・ノートに関してはあとがきに次のように書いてある。
(1) われわれのフィールド・ノートはそれぞれ話者に対する一定のかかわり方を示している。
(2) ここに書きしるしたものは、それぞれ執筆者の一つのフィールド・ノートであって、同一の
執筆者は、同時にまた、複数のそれぞれ違ったフィールド・ノートを書きしるすこともできる。
(3) さらに共同研究者の場合は、同時に複数のフィールド・ノートを提供することで、
いっそう興味を呼ぶことができる。

14:10 「語りのちから ~被差別部落の生活史から~(反差別国際連帯解放研究所しが編,1995)

滋賀県北部のある被差別部落で行った聞き取り調査の結果をまとめたもの。調査は3年間に及び、
対象者は戦前生まれの当時60~80代の方を中心とする。差別する文化=支配する文化に隠されてきた
被差別部落に残されている独自の文化、生を支える文化を明らかにしていく。また、語ることによって、
語り手は自分の生活史を生み出す。つまり、抑圧されてきた自分の「生の解放」を試みている。
「語り」そのものが持つちからを感じる内容だ。

15:00 <休憩>
15:08 研究テーマについての討議
18:45 <休憩>
19:05 研究テーマについての討議
21:00 <終了>

~実地調査~
(記事未提出) 討議の様子010203


Field Notes

  • 前期の山場を迎えているのではと感じている。疲れた。
  • 現在19:00。疲れてしまいました。「語りのちから」の本は、読んでいて面白かった。内容もさることながら、同じ滋 賀県出身の人が語り、執筆したという親近感を持ちながら読んだから、と言うのもあったと思う。レジュメの量は少なかったが、決して手抜きをしたわけではあ りません。
  • テーマが職業になったのは、私も関心があり、「やりたいなぁ」と思っていたので、私個人としてはよかった。その後の細かいテーマの決定は、「時間がかかるだろうなぁ」と覚悟はしていたけど、まさかこれほどまで延びるとは・・・。早く家に帰りたいです。
  • 私が中年の人をやりたいと思ったのは、私個人の問題だけど、あまり父親と話す機会がなく、父がどのようなことを考えて いるのか分かりません。その意味で、この年代の人の話を聞いてみたい、と言うのが1つ。あと、会社での地位が(かつては終身雇用制などで保証されていた) 危なくなった現代において、会社のために心血注いできた彼らはどう思っているのか、日本社会全体に関わる問題でもあるので、このテーマで調べたい、と思っ た。

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